【季節の花図鑑「菊」①菊まとめ】お花屋さんで販売している菊と自然に自生している菊は違う?菊のいろいろ

 9月に咲く花

2023年11月11日 三嶋大社 ほぼ菊で作った「花手水(はなちょうず)」です。

菊は、ハウス栽培されて作られたお花屋さんで売っている菊と、秋になると自然に自生して咲く菊とでは、花の大きさ、花の丈、茎の太さ、葉の大きさなどが、全く違います。栽培されている菊の種類や仕立てられた菊の種類、自然に咲く自生している菊など、いろいろな分類方法で菊の種類を紹介します。




もっと知りたい「菊」について

まずは、すべての菊の特徴についてです。

菊の原産

中国。

菊の科属 

キク科キク属。多年草。

菊の歴史

菊は、奈良時代に中国から渡来したと言われています。

園芸文化が発達した江戸時代には、改良が重ねられ、多くの園芸品種が生み出されました。

菊の茎と葉 

菊の茎と葉20220914高木さんち
中輪菊 2022年9月14日

菊の花の色

菊の花の色は、白、黄色、紅色などがあり、最近の洋菊では、ピンクや真紅、紫紅、オレンジ、グリーンなどもあります。

菊の開花時期

10月~3月頃。

菊の開花期間

土に植わっているものは、春先まで咲き続けます。

切り花にしても、冬場は気温差の激しくないところ(暖房などをつけないところ)に飾っておけば、切ってから1ヶ月以上咲き続けることもできます。

菊の花の特徴

菊の花は、そのお花に対する固有名称というよりも、「(大)輪菊の黄色」「スプレーマムの赤」「中輪の白菊」などのような曖昧な表現方法をすることがほとんどです。大きさや形状、色、季節などの名前で区別され、1つ1つに正式な名前があまり知れ渡っていないのが特徴です。

外国産の西洋菊には、しっかり名前がついています。

菊のいけ方の注意

◆菊は、水がしっかり揚がっていると、タメが効かずにポキンと折れます。いけばななどで、茎を曲げたいなどの時には、前日から水にはつけず、菊の中の水分が少ない状態にしておけば、多少曲げることができます。

◆菊は、葉が大切です。葉がついていることで、菊らしさを表現できます。むやみに葉を取らないようにしましょう。

国産の菊と外国産の菊

菊は、日本にだけある花ではありません。海外でも盛んに栽培されています。

日本に古くからある菊は、総称して「和菊」と呼ばれます。現在では、供花として使われることが多くなっています。

海外特にヨーロッパで作られた菊の種類は、総称して「西洋菊(マム)」と呼ばれます。見た目も洋風で、菊とは思えないような種類もたくさんあります。

大きさで分けた和菊の種類

園芸上では、大きさから大輪菊、中輪菊、小菊などに分類され、大輪菊の(花びらの)形状として、厚物、菅物、大掴みなどがあります。

「菊②大きさで分けた和菊の種類」についてはこちら ↓↓↓

【季節の花図鑑「菊」②大きさで分けた和菊の種類】もっと知りたい大輪菊、中輪菊、小菊それぞれの菊の種類
菊の大きさの種類として、大輪菊の厚物、厚走り、管物の太管、間管、細管、針管、長垂、大掴み、中輪菊の奥州菊、江戸菊、美濃菊、伊勢菊、嵯峨菊、肥後菊、丁字菊、小菊などを紹介

自然に咲いている場所で分けた和菊の種類

路地咲いている「路地菊」や家の庭に咲いている「家菊」、野山に咲いている「野菊」など、毎年自然に生えてくるものには、名前のない菊もたくさんあります。ただほとんどが、1輪が小さい小菊となります。

自然に咲いている菊は、お花屋さんで売っている菊とは違い、まっすぐに育つものの方が少ないくらいです。曲がって咲いている菊の姿が本当の菊の姿です。

露地菊

路地菊20231023富士吉田
2023年10月23日 
岩20231031萩
岩に菊 2023年10月31日 
岩に菊20220917萩
岩に菊 2022年9月17日 

家菊

垂れ菊20231114萩
2023年11月14日

2階にあるお庭から菊が垂れ下がっています。菊に垂れ下がる習性などはありませんが、懸崖菊のように、自然に伸びてしまったのでしょう。これが自然の菊の姿です。

垂れ菊20231031峯田
2023年10月31日 

垂れ下がって地についたところから、上を向いて蕾を持っています。

家菊20231031高田さん
2023年10月31日 

野菊

一般的に言われる「野菊」という品種はなく、野に咲いている菊の総称を言います。

他にもあります 和菊の種類の名前

固有名称ではなく、それぞれの総称の名前などになります。

◆かんぎく 寒菊

寒菊は、12月から1月の寒の頃に咲く菊の総称を言います。英名は、winter chrysanthemum。アブラギクという原種の園芸品種です。

◆ざんぎく 残菊

重陽(菊の節句)を過ぎても、咲いている菊のことをいいます。晩秋の季語でもあります。

◆しゅんぎく 春菊

冬に食べるお鍋には欠かせない食材です。

春菊20231109高木さん
2023年11月9日

◆しらぎく 白菊

白い色をした菊の総称です。秋の季語になります。

◆ともえにしきぎく 巴錦菊

花びらの内側が深紅、外側が黄金色の菊です。

巴錦20231123楽寿園
2023年11月23日

◆ばんぎく 晩菊

遅咲きの菊の総称です。

◆ひなぎく 雛菊

春頃から咲く菊です。デイジーとも呼ばれます。

◆らんぎく 乱菊

花びらの長さがいろいろで、乱れているように見えるのでこう呼びます。




和菊の仕立て方

菊の仕立て方です。

江戸時代の園芸ブームでは、「百種接分菊(ひゃくしゅつぎわけぎく)」と言って、1本の菊に100種類の菊を接ぎ木したとされる絵が残ってます。菊の栽培が人気だったことが覗えます。

3本仕立て

3本仕立てとは、3本のお花の長さ、大きさ、開花時期が揃い、調和のとれたお花になるように栽培する方法です。どれもが揃うのは、非常に難しく、育てるには長年の経験が必要なようです。

菊花展20231106三嶋大社
三本仕立て 2023年11月6日 三嶋大社

写真の撮り方を間違えたようです。3本仕立ては、前が2本後ろが1本になるのが正式です。

7本仕立て

3本仕立てと同じく、それを7本どれもが同時に開花するように栽培する方法です。もちろん、3本よりも難しい方法です。

7本20231123楽寿園
2023年11月23日
7本20231123楽寿園
2023年11月23日

懸崖菊(けんがいぎく)

1本の菊の枝が垂れ下がり、無数の小菊が華やかに咲きます。

懸崖20231123楽寿園
2023年11月23日

盆栽菊

盆栽菊20231123楽寿園
2023年11月23日

盆栽菊ではありますが、岩の上から咲かせてある素晴らしい作品です。

ミニ盆栽2-231123楽寿園
2023年11月23日

こちらは、ミニ盆栽です。

西洋菊(マム)の種類

スプレーマム

スプレーマムは、大きさの指定はありませんが、スプレー咲きをしている洋菊の総称です。固有名称ではありません。

スプレー咲きとは、1本の茎からいくつもの茎が枝分かれし、花を咲かせる咲き方を言います。

SP20231115高木さん
2023年11月15日 
SP20231030高木さんち
2023年10月30日 
SP20231030高木さんち
2023年10月30日 

ピンポンマム

ピンポンマムは、大きさに指定はありませんが、厚みのある球状のような、丸い高さのある洋菊です。

ピンポン20231123楽寿園

写真はスプレーマムのピンポンマムですが、1本タイプのものをピンポンマムと呼びます。

いろんな種類の菊

名前の種類のわからない様々な洋菊たちです。ほとんどがスプレー咲きのものです。

SP20231124高田さん
2023年11月14日 
管物20231123楽寿園
2023年11月23日
sp深紅20231123」楽寿園
2023年11月23日

菊のまつり ~菊花展~

秋になると全国で菊花展が開催されます。都道府県を北からの紹介になります。

◆南陽の菊まつり

山形県南陽市。

1912年(大正時代)に料亭で菊人形が飾られたことがこの菊まつりの初めりで、約100年以上の歴史があります。

熊野神社周辺と南陽市中央花公園にて10月上旬から11月上旬まで開催。

◆笠間の菊まつり

茨城県笠間市。笠間稲荷神社にて10月下旬から11月下旬まで開催。

◆亀戸天神菊祭り

東京都葛飾区。亀戸天神にて10月下旬から11月下旬まで開催。

◆楽寿園菊まつり

静岡県三島市。三島市立公園「楽寿園」にて毎年10月下旬から11月いっぱいの開催。期間限定でライトアップもあります。

菊のおすすめの逸品

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明日はどんな手仕事する?

菊だけでなく、お花屋さんで売られている栽培されたお花と自然に咲いているお花では、かなりの違いがあります。

それがいいわけでも、いけないわけでもありませんが、お花の本当の姿を知って、お花を楽しむことが、本当のお花の楽しみ方なのではないかと思います。

菊は、茎もか細く、ひょろひょろと咲くのが本当の菊の姿です。お花屋さんで売っている茎が太くて真っ直ぐな菊は、明らかに作られた菊です。

日本人として、自然の姿やわびさびを知り、和の心を大切に思うことは、とても素敵なことだと思います。作られているものも素敵ですが、自然の儚い姿も心に停めておきたいものです。

それでは、最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。

明日が素敵な1日になりますように。

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カマキリがいました 2023年11月15日 

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20代30代で海外30か国、国内39都道府県を旅した経験から、「日本人の季節を取り入れた素朴な生き方・暮らし方」が好きになりました。日本の伝統文化のいけばなを30年以上嗜み、地元の食べ物、旬の食べ物、保存食、和菓子、しつらえ、手仕事など、季節や暦を大切に感じながら日々暮らしています。自分でも忘れてはいけないことやレシピなどをここに記録し、自分でも見て確認しながら日々アップデートしています。皆様の参考になれば幸いです。ちなみに、私は料理研究家でも料理人でもありません。お花の先生をしています。自然と共に、日々の変化を自分の手で愉しんでおります。

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