「ぼたもち」と「おはぎ」の違い論争が勃発しています。
簡単に言えば、春のお彼岸の頃に牡丹のお花が咲くので「ぼたもち」といい、秋のお彼岸の頃に萩のお花が咲くので「おはぎ」といいます。
ただ、違いはこれだけではなかったのです。
実は、あんこの違い、中のもち米の違い、更には、春と秋だけではなかったということまで、季節ごとにその違いをまとめていきます。
あんこの状態ともち米の状態
和菓子屋さんやスーパーなどでは、春のお彼岸や秋のお彼岸の時期になると「ぼたもち」や「おはぎ」としてつぶあんタイプやこしあんタイプ、きな粉タイプのもの、ごまタイプのものなどが販売されています。
これらはすべて同じもののように思えますが、実はあんこの状態や、もち米の状態が、季節や地域によっても違いがあります。日本の和菓子ならではの、季節の移り変わりがわかる繊細な違いに、納得させられます。
あんこの状態:「つぶあん」、「こしあん」
あんこの状態は、小豆に違いがあります。昔は、小豆は秋に収穫され、収穫されたばかりの小豆は皮が柔らかく、そのまま炊くので「つぶあん」を使い、春にはその皮が固くなってしまうので、皮を取り除いた「こしあん」を使うと言われています。その言われから、季節により「つぶあん」や「こしあん」を使うと言われていましたが、現在では、品種改良や農家さんの配慮により、秋に収穫された豆が安定して炊けるように農家さんである程度保存し、年末に出荷して年明けに美味しい小豆が食べられるようにされているようです。昔の配慮も、今の配慮も、日本人は素晴らしいとしか、言いようがありません。
もち米の状態:「本殺し・皆殺し」、「半殺し」
もち米の状態は、「本殺し(ほんごろし)または皆殺し(みなごろし)」といって、炊いたもち米をすりこぎで完全に搗(つ)いてしまいお餅に近い状態になったものと、「半殺し(はんごろし)」といって、炊いたもち米をすりこぎで半潰しになるくらい搗(つ)く状態があります。
牡丹餅、夜船、御萩、北窓の違い
それぞれ違う四季のタイプの紹介です。
春の牡丹餅(ぼたもち)

◆牡丹餅という理由
春のお彼岸(3月中旬から下旬)の頃に、牡丹の花が咲くことから「牡丹餅」と書いて「ぼたもち」と言うようになったといわれています。
◆牡丹餅のあんこ
牡丹餅のあんこは、豆が冬を越し、だんだん豆の皮が硬くなってきるので、その皮を取り除いた「こしあん」を使います。
◆牡丹餅のもち米
牡丹餅のもち米は、「本殺しまたは皆殺し」といって、もち米を完全に潰してお餅に近いの状態にします。
◆牡丹餅を食べる行事 春のお彼岸
「春のお彼岸」についてはこちら ↓↓↓

夏の夜船(よふね)
◆夜船という理由
もち米とお米を混ぜていたら、擂粉木(すりこぎ)で半潰しにすると音がせず、いつ突いたかわからないことが、夜、船着き場に着く船が静かで、いつ着いたのかわからないことの言葉の例えから、「夜船(よふね)」と言うようになったといわれています。
◆夜船のあんこ
夜船のあんこは、夏は豆の皮が硬くなってきるので、その皮を取り除いた「こしあん」を使います。
◆夜船のもち米
夜船のもち米は、上記のように、音がしないとされる半分潰す「半殺し」になります。
秋の御萩(おはぎ)

◆御萩という理由
秋のお彼岸(9月中旬から下旬)の頃に萩の花が咲くことから、「萩餅(はぎもち)」が「御萩餅(おはぎもち)」になり「御萩(おはぎ)」と呼ばれるようになりました。
また、「おはぎ」は、室町時代から使われている衣食住に関する物事について使った隠語的な女房詞(にょうぼうことば)に由来しているともいわれています。
◆御萩のあんこ
御萩のあんこは、小豆の収穫と同じ時期で、採れ立ての柔らかい小豆の皮も一緒に潰してしまうので「つぶあん」を使います。
◆御萩のもち米
御萩のもち米は、「半殺し」といって半分潰します。
◆御萩を食べる行事 秋のお彼岸
「秋のお彼岸」についてはこちら ↓↓↓

◆「おはぎ」という同じ名前のもの
「おはぎ」とは、上記、お彼岸に食べる和菓子のことを言いますが、同じ「おはぎ」という名前の植物があります。この「おはぎ」という植物は、別名「よめな」「うはぎ」「はぎな」などといい、キク科の野菊の花になります。
冬の北窓(きたまど)
◆北窓という理由
もち米とお米を混ぜていたら、擂粉木(すりこぎ)で半潰しにすると音がせず、いつ突いたかわからないことが、「突き知らず」ということで、「月知らず」という同じ言葉の例えで、月を知らないのは北の窓ということから、「北窓(きたまど)」と言うようになったといわれています。
◆北窓のあんこ
北窓のあんこは、柔らかい小豆の皮も一緒に潰してしまうので「つぶあん」を使います。
◆北窓のもち米
北窓のもち米は、上記「月知らず=突き知らず」ということで半分潰す「半殺し」にします。
おはぎの作り方 ①つぶあん
上記のように、季節に応じて作ることができるようになるのが本当は良いのかもしれませんが、まずは、「つぶあん」「半殺し」の「おはぎ」に挑戦してみましょう。
つぶあんだけでもよいですが、下記あんこの作り方、もち米の炊き方の量で、つぶあん、ごまあん、きなこあん3種類、各10個、計30個作れてしまいます。簡単ですので、できそうでしたら3種類も挑戦してみてください。
《共通》あんこの作り方
あんこの作り方、あんこの詳細はこちらをご覧ください。↓↓↓

《共通》もち米の炊き方
《 材料 》
もち米 3合
うるち米 200g
《 作り方 》
①もち米とうるち米を合わせたものを洗い、水気を切っておきます。
②水を入れて、1時間をほどおいてから炊きます。
③炊き上がったら、ご飯をほぐし、軽く潰します。
*もち米がない時は、うるち米3合、5ミリ角に刻んだ切り餅(1個50g)を3個で炊いても同じようにできます。
あんこでもち米を包む
①あんこを1つ40gづつ分けて丸めておきます。
②もち米が炊き上がったら、粗熱がとれたところで、お椀などを使っておはぎ1つ分約20gづつに分けて、丸く形を整えていきます。ラップを使うと簡単です。
③ラップを手に広げ、あんこをのせて、手のひらくらいに丸く薄く広げます。
➃その上に②をのせます。
⑤あんこを伸ばしながら、②を包むようにします。
⑥まわりがあんこで全部包めたら、軽く握って形を整えます。

おはぎの作り方 ②ごまあん

黒ごまあんの作り方
《 材料 》
黒ごま 大さじ2
砂糖 大さじ2
塩 少々
《 作り方 》
①黒ごまをフライパンで炒ります。ごまは、3粒跳ねたら炒れたと言われています。
②炒ったごまをすり鉢に入れて、すりこぎでよく擂ります。
③砂糖を加え、よく混ぜて、塩で味を調えます。
ごまあんを包む
ごまあんは、ごまあんだけでは甘みが足りないので、もち米の中にあんこを入れます。
①あんこ20gを小さく丸めておきます。
②もち米を40gづつ分け、丸めて、手のひらくらいに丸く薄く広げます。
③その上にあんこをのせて包みます。

➃外側にごまあんをまんべんなくつけます。
おはぎの作り方 ③きなこあん

きなこあんの作り方
《 材料 》
きなこ 大さじ3 きなこは市販のきなこで構いません。
砂糖 大さじ2
塩 小さじ1
《 作り方 》
きなこに砂糖を加えよく混ぜて、塩で味を調えます。
きなこあんを包む
きなこあんは、きなこあんだけでは甘みが足りないので、もち米の中にあんこを入れます。
①あんこ20gを小さく丸めておきます。
②もち米を40gづつ分け、丸めて、手のひらくらいに丸く薄く広げます。
③その上にあんこをのせて包みます。
➃外側にきなこあんをつけます。

ぼたもち、おはぎの地域性

地域性もさまざまです。
徳島県や群馬県では、おはぎ本体のことをおはぎとは言わず「半殺し」というそうです。
また、前記作り方では、「つぶあん、ごまあん、きなこ」の3タイプをご紹介しました。関東ではこの3タイプになります。
しかし、関西や西日本では、これが「つぶあん、きなこ、青海苔」の3タイプとなります。
さらに、宮城県などでは、「ずんだ餡」が入ってきます。
地域によって、いろいろですので、地域の作り方に沿って作り伝えていってください。
ぼたもち・おはぎの歴史
春と秋のお彼岸におはぎやぼたもちを仏様にお供えする風習は、江戸時代の文化文政年間(1804年から1830年)頃にはあったとされます。
今のように、甘いあんこを使って作られるようになったのは、日清戦争(1894年から1895年)以降で、日本が台湾を統治して、台湾からお砂糖がたくさん入ってくるようになった後からと言われています。それ以前は、塩味でした。今の甘い味に慣れてしまっているので、塩味というのが、想像できませんね。
ぼたもち・おはぎのおすすめのお店
かわい米店


1919年創業の老舗米や「かわい米や」さんのおはぎは、種類が豊富です。
写真のつぶあんをはじめ、こしあん、きなこ、ごまなどがあります。
店舗では、普段はお米やおにぎり、だんご、豆大福の販売ですが、お彼岸の時には期間限定でおはぎやぼたもちが販売されます。
サイズは、直径6センチほど。小ぶりなので1つだけでなく違う種類も食べられてしまいます。
もち米は、半殺しです。あんこは程よい甘さです。
静岡県三島市日の出町6-15
055-975-1095
10:00~18:00 日・月定休日
森島米店


地元伊豆のお米屋さん「森島米店」が作る「森島おはぎ」がとても人気です。
「森島おはぎ」は、伊豆天城に伝わる「塩おはぎ」です。文豪「井上靖」が愛したとされる伊豆の郷土料理を参考に、甘さ控えめに仕上げた懐かしい味の手作りおはぎです。
お米屋さんが作るおはぎらしく、もち米を潰さずにほぼそのまま使っています。お米屋さんだからといって、もち米がたくさんではなく、あんことの量も同量くらいで、ずっしりと重いおはぎです。大きさは、7×10センチくらいの楕円形です。130ℊありました。
「ふじのくに新商品セレクション」でも2022年度の金賞を受賞し、人気テレビ番組「マツコの知らない世界」でも紹介されるほどの人気商品です。
伊豆にいらした際には、ぜひお試しくださいませ。
静岡県伊豆市青羽根349
0558-87-0009
9:00~16:00 毎週火曜、水曜定休
ぼたもち・おはぎのおすすめの逸品
「ぼたもち・おはぎ」にそっくりなローソクです。間違って食べてしまいそうですね。牡丹餅と御萩が大好きだった叔父が喜びそうです。こちらからお取り寄せできます。↓↓↓

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